柳野隆生 > ノスクマードベンチャー塾 > 塾活動記録 2011年 第7回(8月)のテーマ 2011年本当の危機が始まる! 〜国際バブルと商品高がもたらす「恐怖のシナリオ」〜
2011年本当の危機が始まる!
〜国債バブルと商品高がもたらす「恐怖のシナリオ」〜
8月のノスクマードベンチャー塾では、今年の1月に学習した、朝倉慶氏著作の『2011年本当の危機が始まる!― 国債バブルと商品高がもたらす「恐怖のシナリオ」― 』を再び輪読した。1月から半年余りが過ぎ、東日本大震災の発生や、アメリカやヨーロッパの経済問題など世界情勢は刻一刻と変化してきた。そのような社会の変化を鑑み、改めて学習し検証していく作業を行なった。本書は、2010年の11月に出版され、2011年の日本経済を予測したものである。日本の財政問題の深刻さや世界の経済トレンド分析、起こりうる金融危機について深く掘り下げている。震災で日本企業の経営状況がさらに悪化するなか、社会経済や事業経営全般を俯瞰し、新たな課題や問題の本質を捉えられる幅広い視野を養うことが重要である。
2011年から2012年にかけて、日本にハイパーインフレ時代が訪れるといわれている。中国やアメリカなど、世界では既にインフレ傾向が現れている。一方で今の日本は、過去10数年にわたってデフレ状態が続いており、多くの日本人はまるで世界がデフレ一色に染まっているかのように錯覚しているかもしれない。しかしインフレへの大きな流れが、商品相場の上昇にみることができる。金や銀などの貴金属、アルミやニッケルなどの非鉄、さらにレアアースや石油、小麦やトウモロコシといった食糧に至るまでじりじりと値上がりが続いている。こうした基礎物資の値上がりは相当深刻な状況になってきており、その背景には、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国)をはじめとする新興国のめざましい発展がある。世界経済の発展、また世界人口の増加によって石油や非鉄、穀物など必需品の需要が増えるのは構造的なトレンドである。金は10年前に比べ5倍以上も価格が上昇しており、胴や石油は3〜4倍、鉄鉱石に至っては8倍近くも上昇している。また小麦やトウモロコシも約2〜4倍になっている。この間、我々の収入は殆ど増えておらず、じつは日本人の給与は97年から下がり続けている。ひどいデフレがあらゆる物の値段を下げ、その裏で進んでいるインフレを覆い隠している。
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日々の相場の動きを追っているだけでは、長期的なトレンドや、水面下で起こっている根本的な変化を見逃しがちである。肝心なのは、相場自体の構造的、本質的な変化をとらえ、長期トレンドを把握することである。それは、企業を経営する上でも非常に重要である。とりわけ、センシティブに経営の舵を取らなければならないVB系(研究開発型)企業においては、長期トレンドを分析し、それに基づいた中長期的な事業計画を立てる必要がある。 |
この物価上昇が、金利の高騰、言い換えれば国債や社債などの債権価格の暴落を引き起こす原因となる。国債価格は将来の期待インフレ率と、国の信用度で決まる。国の財政がまさに破綻寸前であるときに、東日本大震災が起こり、さらに資金需要が増したため、国の信用度はさらに落ちると考えられる。日本の累積赤字はほぼ1,000兆円、税収は37兆円しかない。歳出は90兆円を超える。仮に金利が5%上がると、支払い金利は50兆円増加となる。例えると、年収370万円の人が、一億円の借金があり、返済の金利だけで年間500万円支払うという計算になる。1,000兆円の借金というのは、元本を返すのが大変なだけでなく、金利が上昇し始めるとどうにもならなくなってしまう金額なのである。これまで日本が財政破綻せずに生き延びてこられたのは、回りまわった国民のお金で、金融機関が国債を買っているからである。不況のため民間企業への資金貸出が伸びず、その分が国債購入に回っている。ただでさえ新たな国債購入資金が枯渇してきているのに、復興資金需要で民間金融機関の購入資金も枯渇すると考えられる。 |
本書で予測されていることが、全てその通りになるわけではない。しかし、近い将来我々が予想し得ない混乱、金融危機が起こる可能性は充分にある。そこを乗り切るためにまず重要なのは、その混乱を恐れないことである。世の中が大きく変わる、社会変革の時代に生きることを前向きにとらえ、受け入れる覚悟を決めておくことである。 またそのうえで大切なのは、その混乱を一緒に乗り越えてゆける、信頼できる仲間をもつことである。利益を度外視して協力し合い、支えあうことができる仲間がいれば、それが危機を乗り越える原動力となる。 |
社会混乱は、新しい世の中をつくるための1つの通過点であり、それを機に我々が理想の社会をつくるよう力を尽くせばいいのであって、歴史上何度も経験してきたことである。本当に社会を良くしたい、いい世の中をつくろうという意志を持って臨めば、混乱期は自らの志を遂げるチャンスとなり得るのである。 今回当塾では、様々な意見や疑問などが上がり、活発な議論を行なったが、今後も引き続きこの問題を注視し研究していく意向である。
・使用参考文献
『2011年本当の危機が始まる!―国債バブルと商品高がもたらす「恐怖のシナリオ」』
朝倉慶 著(ダイヤモンド社)