Q1.商標の分類とはどのようなものですか?
A.商品区分が第1類から第34類、役務(サービス)区分が第35類〜第45類となっています。
商標区分については第1類〜第45類に分かれており、例えば自動車(商品)の名前については第12類で取得する必要がありますが、自動車の修理(サービス)となると第37類となります。基本的に区分が相違すれば商標が同一でも権利が併存します。
特許庁のページ「類似商品・役務審査基準」
Q2.役務とは何ですか?
A.「エキム」と読みます。たとえば広告業、小売又は卸売業、金融業、不動産業、通信業、輸送業、旅行業、飲食業、などのサービスのことです。
Q3.商標の類似調査を行うときの「類似群コード」とはなんでしょうか?
A.特許庁ではこの「類似群コード」が共通していれば「類似」と判断することになります。
商標が類似するか否かは個別具体的に判断されるものですが、審査の便宜を図る為に特許庁は「類似商品・役務審査基準」を公表しています。例えば「口紅」と「香水」は共に類似群コードが「04C01」であるため「類似」として判断されることになります。ただ「口紅」と「香水」では感覚的に「類似」であることがご理解頂けるものと思いますが(共に化粧品と認識)、中にはどうも納得のいかないものもあります。一例を挙げれば「電子レンジ」と「電気式鉛筆削り」は共に類似群コードが「11A06」であるため「類似」として判断されます。どうして類似なの?と首をかしげたくなるかもしれませんが、審査基準によって「類似」とされている以上致し方ありません。このように、登録性や使用の可否を判断する前提として、類似群コードの特定は極めて重要なファクターです。
特許庁のページ「類似商品・役務審査基準」
Q4.商標とドメイン名との関係は?
A.ドメイン名とは、各コンピュータに割り当てられたインターネット上の「住所」であるのに対して、商標は、商品又は役務を他の商品又は役務と区別し識別させるものであって、ドメイン名とは根本的に違います。
商標権は、原則として各国毎に成立するので、例えば国内で商標権が成立しても、他の国である米国で同一の商標権が自動的に成立するものではありません。一方、ドメイン名は世界に一つしか存在しません。
Q5.どういうものが商標なのですか?
A.商標とは、自己の商品や役務(サービス)を、同種の他人の商品やサービスから識別するために使用する識別標識です。
法律上の取り扱いに差異はありませんが、商品に使用するか、あるいは役務(サービス)に使用するかによって、いわゆる商品商標と役務商標に分けることができます。例えば、フェアレディーZは自動車についての商品商標(第12類)ですし、また「NTT」は通信ネットワークサービスの提供についての役務商標(第38類)です。尚、商標には、このような文字に限らず、図形、記号なども含まれ、更に立体的形状の登録(立体商標)も認められております。具体例を挙げると、不二家の「ペコちゃん」「ポコちゃん」、ケンタッキーフライドチキンの「カーネルサンダース」などです。
Q6.地域団体商標登録とは何ですか?
A.地域の名称及び商品(役務)の名称等からなる商標について、一定の範囲で周知となった場合には、事業協同組合等の団体に対して地域団体商標として登録を認める商標です。
Q7.小売等役務商標制度とは何ですか?
A.平成19年4月から、コンビニ、百貨店、家電量販店、ホームセンターなどの名前が商標登録(第35類)できるよう法改正されました。
即ち今までの小売業者等は商標法で保護を受けようとすると、取扱い商品に対応する区分で商標登録をすることが必要となり、多額の費用を負担して いましたが、一の区分で認められたことにより、負担が軽減されます。
Q8.商標出願は文字しかできないのですか?
A.いいえ、文字以外でも出願はできます。
基本的に商標出願できないものはないと思って下さい。但し、登録できるに相応しいものかどうかは審査されますので、最終的には特許庁の判断を仰ぐことになります。
Q9.ドメインは商標登録したほうがいいですか?
A.ケースバイケースですが、商標登録して悪いことはありません。
ただ、会社名、商品名と相違するようなドメインを使用しているのでしたら、そのドメインで商標登録する必要はないかもしれません。
Q10.インターネットのサイト名について商標登録をすることはできますか?
A.はい、商標登録することができます。
そのサイトが自社の商品を販売するサイトであれば、販売を行う各商品について権利を取得することになります。また、そのサイトがサービスを提供するサイトであれば、提供を行うサービス(役務)について権利を取得することになります。
※小売業、卸売業に関するサービスについても平成19年4月1日より商標登録出願することが可能になりました。
Q11.ホームページ上での商標の使用は商標的使用態様での使用になりますか?
A.ホームページでの商標の使用は勿論「使用」に該当致します。
商標法第2条第3項第7号には、「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」と明記されており、このよう行為は「使用」に該当致します。 従いまして、例えばサイト上に「SONY」の表示をして商品「テレビ」を販売したり、「NTT」の表示を表示をして役務「電気通信サービス」を提供する行為は当然に商標権侵害となります。インターネットはあくまでも「手段」でありますので、販売方法が変わったとしても商品の販売又は役務の提供には何等相違ありません。
Q12.コンピュータプログラムをCD-ROM等の記録媒体として販売する場合は、当然に有体物の商品として認識されると思うのですが、どの区分に属するかがわかりません。また同じコンピュータプログラムをインターネットにより有料でダウンロードさせた場合は商品なのでしょうか?それとも役務なのでしょうか?さらにインターネットにより有料でダウンロードさせない場合はどのようになるのでしょうか?
A.将来における事業展開や防衛上の観点から両区分(第9類と第42類)での出願をお勧め致します。
先ず電子計算機用プログラムをCD-ROM等のパッケージソフトとした場合は、第9類における「電子応用機械器具及びその部品」に属し、商品も「電子計算機用プログラム」と明記することができます。また電子計算機用プログラムをインターネットにより有料でダウンロードさせた場合(無体物)でも、同じく第9類として「商品」として扱われます。
一方、電子計算機用プログラムをインターネットにより有料ではあるがダウンロードさせない場合は、これは情報の提供、即ち「役務」となって第42類の「電子計算機用プログラムの提供」として扱われます。従いまして、現状は第9類の商品或いは第42類の役務であったとしても、将来における事業展開や防衛上の観点から両区分(第9類と第42類)での出願をお勧め致します。
Q13.音や匂いでも商標登録できるのですか?
A.2015年4月から、「音の商標」、「ホログラム商標」、「動き商標」、「色彩のみからなる商標」、「位置商標」が新たに登録できるようになりました。
一方、匂いに関する商標は認められていません。
Q14.名前でも商標登録できるのですか?
A.できます。ただし、ありふれた氏のみでは登録できません。従いましてフルネームでしたら可能です。
Q15.商標のネーミングをするときの注意点は何ですか?
A.ネーミングの候補を多数挙げ、できれば優先順位を決めて調査することをお勧めします。
最終候補を1点に絞って調査したところ、結果が「×」となった場合、また最初から検討し直さなければならず、これが商品(役務)の発表間近であれば目もあてられないことになります。また、出願した商標がすべて登録されるわけではありません。商標登録のための条件を満たしていない商標は、他人の登録商標との類似性を審査する前に登録不可となるものがあります。無駄な労力・時間・費用をかけないためにも、どのような商標が登録される条件を満たしているのかを把握しておく必要があります。商標が登録されるためには、「自他商品(役務)の識別力」が必要です。「自他商品(役務)の識別力」とは、自分の商品(役務)と他人の商品(役務)とを区別させるための商標の基本的機能のことです。以下に挙げるものは、識別力がない商標の例です。
(1)普通名称 普通名称とは商品又は役務の一般名称のことです。
固有名称:ズボン、せんべい、チョコレート、ワードプロセッサ
略 称:チョコ、バイク、ワープロ、パソコン
俗 称:むらさき(醤油)
愛称:般若湯
等があります。
(2)慣用商標
(3)記述的商標
(4)ありふれた氏または名称
(5)簡単でありふれたもの
(6)これら以外で、識別力がないもの
Q16.文字商標と図形商標の境界があるのですか、また権利効力がかわるのですか?
A.基本的に、読むことができるのであれば、これは文字と認識され、図形としては認識されないものと考えてください。逆に、読むことができないのであれば、これは図形商標と認識され、文字としては認識されないものと考えて下さい。そして効力に関しては全く同じです。文字と図形によって権利効力に差異が生じることはありません。
Q17.商標に似た言葉で、「商号」という言葉を聞きますが、商標と「商号」とはどんな関係にあるのですか?
A.従いまして、新会社設立や名称変更の際は、先ず 商標として取得できるか否かを調査されることが望まれます。
「商号」とは、商人が営業で自分を表すために使用する名称です。例えば「○×□商事株式会社」、などがそれです。この商号をそのまま商標とすることも多く、「商号の商標化」などといわれます。「○×□商事」として商標として使用するなどです。このように「○×□商事」単独での使用は基本的に「商標の使用」となりますので、商標権を取得しておくことが望まれます。
よく、会社登記しているので「○×□」や「○×□商事」は独占権を有している、或いは自由に使用できるものであると勘違いをされている方がいらっしゃるのですが、これは大きな誤りです。平たく言えば、「商号の使用」とは、名刺やカタログ等に住所とともに「○×□商事株式会社」(登記されている記載そのまま)と記載する場合であって、それ以外での使用は、「商標の使用」となり得るものであると思われます。
Q18.サービスマークとは何ですか?
A.金融業、運送業、広告代理業等商品のないサービス業において、自他のサービスを区別するためのマークをサービスマークといいます。
鉄道会社の「JR」や航空会社の「JAL」がこれにあたります。鉄道会社は電車の車両を商品として売っているのではなく、旅客輸送というサービスを提供しているのですから、鉄道会社が使うマークはサービスマークとうことになります。
Q19.商標登録を受けるメリットは何ですか?
A.商標登録を受けると、日本において商標権者は、その登録商標を独占的に使用すること(専用権)ができ、登録商標と同一または類似の範囲での他人の使用を禁止すること(禁止権)ができます。登録の日より10年間使用することができ、存続期間の更新登録を行うことで、半永久的に商標権を維持することができます。商標権は財産権ですので、他人に譲渡することもできますし、登録商標について使用料を得ることもできます。会社の承継や個人の相続の対象にもなります。更に、専用権や禁止権の範囲で無断で同一・類似の商標を使用する者には、差止や損害賠償の請求をすることができます。簡潔にまとめると、以下の通りです。
(1)独占的に使用することができる。
(2)他社は、同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品・役務に使えなくなる。
(3)他社に対し、侵害行為の差止め、損害賠償、信用回復措置等を求めることができる。
(4)更新さえすれば、半永久的に独占権が維持できる。
(5)第三者に対し使用許諾や譲渡等の設定ができる。
Q20.商標登録出願の際、商標を考えた人を記載するのですか?
A.必要ありません。商標は創作物でありません。
発明者(創作者)という概念がありません。あくまでその商標(名前)を選んだだけに過ぎないからです。ただ、キャラクターは創作物ですので、それを商標登録出願する場合には、著作者としっかり契約を交わしておく必要があります。
Q21.防護標章登録制度というのはどういうものですか?
A.防護標章登録制度とは、 使用する予定のない商品や役務(正確には登録商品の指定商品等と非類似の商品等)についても、 著名な商標を有していれば権利として保護され、他人の権利化や使用を阻止できる制度です。
商標は、「不使用取消審判」という制度があるため、商標権を取得してもその商標を使用していなければ取消しになるというリスクを持っています。 従って、使用しない商標はとらないのが原則ですが、自己の著名な登録商標で、指定商品等と非類似の商品等について実際には使用しないが、 他人が同じ登録商標を使用することで混同を生じる恐れがある場合には、その商品等について防護標章として登録し保護されます。
Q22.商標は一定期間使用しないと取消の対象になると聞いたのですが、本当ですか?
A.はい、本当です。商標は、商標権になってもそれだけで価値があるわけではありません。その商標が使われ、世間に周知・著名になりブランド力や他の商品と識別されうることで初めて価値が生まれます。従って、いつまでも使われていない商標には価値がありませんし、逆に他の人が商標を選ぶ際に不利益になります。第三者は登録商標と類似する商標権を取得できないため、商標を決める際の選択の幅を強制的に狭められるからです。こういった理由から 商標法では「不使用取消審判」という制度が設けられています。これは何人であっても請求できるので、ある日突然、全く知らない人からこの審判を請求されて自分の権利がなくなってしまう可能性があります。注意しましょう。
Q23.商標、商品(役務)の類否判断はどのようにされるのでしょうか?
A.商標の構成要素として、称呼、外観、観念の3要素がありますが、ほとんどの場合、称呼が支配的だと思います。ですから、呼び名が似ているかどうかを目安にしてください。 また、商品(役務)の類否は特許庁が類似群コードで商品(役務)を管理していますので、類似群コードが同一か否かで判断してください。
Q24.商標登録しておけば、その内容(技術、デザイン)まで真似されませんか?
A.商標権とは、商品またはサービス(役務)の名称を独占的に使用する権利です。そのため、商標登録を行ったとしても、別の名称を使用すれば同様な商品を販売したり、同様なサービスを提供したりすることができます。したがって、あるサービスに対してその提供方法を表すような名称について商標登録を行ったとしても、名称さえ似ていなければ、他人も似たようなサービスを提供することができます。 よって、技術的、デザイン的に特徴がある商品の場合は、特許権や意匠権を併せて取得することが望まれます。