柳野国際特許事務所

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中国知的財産研究2「中国の特許出願について」


1.はじめに
2.拡大先後願の違いについて
3.新規性喪失の例外規定について
4.登録後のクレームの訂正について
5.誤訳の訂正について


1.はじめに

 近年、弊所においても中国への特許出願の取り扱い件数が増えています。日本出願を基礎にして優先権を主張し、パリルート或いはPCTルートで中国へ特許出願するケースです。
 日本と中国の特許法は異なる部分も多いため、このような中国への特許出願の際には、いくつか注意すべき点があります。


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2.拡大先後願の違いについて

 たとえば、日本でいう特許法第29条の2(拡大先後願)について、中国の特許法では出願人/発明者が同一の場合の例外規定がありません(専利法第22条)。したがって、日本で行った同一出願人の先願、後願についてそれぞれ優先権を主張して中国へ出願した場合、後願が専利法第22条の拒絶の対象となってしまいます。実務上、後願に用いる図面が先願で用いた図面と同じである場合、特に拒絶理由が出されやすい傾向にあるといわれています (注1)。

 日本では関連する発明をできるだけ基本出願(先願)の公開前に開発・出願していくことが一般的な考え方です。しかしながら、上記のことから、これらの関連する発明の中国出願を行う場合には、先願から1年以内であればこれらを纏めて中国出願し、先願から1年経過していれば専利法第22条を考慮してできるだけ先願と重複しないように内容調整する必要が生じることになります。

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3.新規性喪失の例外規定について

 中国の特許法では、新規性喪失の例外を認めるケースとして、

@ 中国政府が主催する又は認める国際展示会で初めて展示された場合
A 規定の学術会議、或いは技術会議上で初めて発表された場合
B 他社が出願者の同意を得ずに、その内容を漏洩した場合

が規定されています(専利法第24条)。

 しかしながら、日本の規定とは異なり、出願前に刊行物や電気通信回線を通じた発表を行った発明については新規性喪失の例外が認められません。
 また、そもそも上記@、Aで認められる博覧会や学会は、ほぼ中国国内のものとなります(この点、中国以外の国でも同様)。したがって、中国以外の国で発明の発表を行う場合には例外規定を使えないことになりますので、発表よりも前に、日本や中国その他のいずれかのパリ同盟国に特許出願しておくことが必要です。



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4.登録後のクレームの訂正について

 中国では一旦特許査定がなされると原則としてクレームや明細書等を訂正することができませんが、例外的に、第三者から無効審判を請求された場合にかぎり、クレームの訂正が認められています。

 ただし、この場合、明細書や図面の訂正ができないうえ(実施細則第69条)、クレームの訂正についても、クレームに記載されている事項の範囲内での訂正のみ認められ、明細書にのみ記載されている事項をクレームに新たな構成要件として追加するような訂正は認められていません。

 したがって、特許査定時にクレーム設定されている発明の数が少ないと、その後に無効審判を請求された場合に、実質上、有効なクレームの訂正(減縮)を行って特許性を争うことができなくなる虞があります。

 よって、中国への特許出願の際には、日本の基礎出願の内容をそのままコピーしたりするのではなく、広い権利範囲のクレームからより具体的な内容のサブクレームまで、多段階にクレーム設定されていることを確認することが重要となります。


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5.誤訳の訂正について

 日本の特許出願を基礎にして中国出願する際、日本語のクレーム・明細書を中国語に翻訳して出願します。この翻訳の際には幾重にもチェックが行われますが、誤訳の可能性を完全に消すことはできません。

 このような誤訳の訂正について、PCTルートの場合には、中国国内への移行から公開までの間、および実体審査開始の通知から3ヶ月の間、それぞれ訂正の機会があります(実施細則第113条)。

 他方、パリルートの場合には、誤訳の訂正の機会がありません。したがって、とくにパリルートの場合には出願時の翻訳のチェックをより厳しく行う必要があります。



※ 注1 「日米欧中に対応した特許出願戦略と審査対応実務」立花顕治著 社団法人発明協会





(文責 中国特許研究グループ 中谷・森岡)

(2010/08/05


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